時計ケアに必要な正しい道具選びと、正しい手順を紹介。
これから本格的な時計ケアを実施しよう…という方に覚えておいて欲しい、時計ケアに必要な手順などを、プロによるセルフメンテナンス指南。
■1.拭き掃除
■2.ブラッシング
■3.角汚れ落とし
■4.黒ズミ落とし
■5.凹み汚れ落とし
■1.ブレスレット類の取り外し
■2.丸洗い方法
■1.ブレスレットの取り外し
■2.ブラシで磨く
■3.爪楊枝で角汚れ落とし
■4.ブレスレットを取り付ける
岡部俊克さん・三宝スタッフ
「HELI」マイクロファイバークロス
超極細繊維が目に見えない微細なチリや汚れもバッチリ吸着。柔らかな素材なので、SS素材はもちろん、貴金属や合成樹脂、ガラス、革ベルトなど、あらゆるケアに最適。
■1400円ほど
「メイコー」ナイロンブラシ(左)&豚毛ブラシ(右)
ブレスのコマやケースのラグなど、手が届きにくい部分のケアに便利な専用ブラシ。毛先が柔らかくアルコール溶剤に強い豚毛製と、弾力が強く水洗いも容易なナイロン製は、用途やシーンに応じて使い分けを。
■ナイロンブラシ 800円ほど、豚毛ブラシ 800円ほど
「ベルジョン」スマイルラインバネ棒はずし
プロも愛用するバネ棒はずしの最高級品。アルミ製の軽量ボディにシックなモノトーンカラーが特徴。先端部は付け替え式のスチール製なので、破損や欠けの場合は交換可能。
■2000円ほど
バネ棒17種セット
長さ8~24mmまで、1mm刻み17サイズのバネ棒セット。ドレス系やビッグサイズ系はもちろんレディースまで、ほぼすべてのモデルに対応しているので、これさえあればイザとうい際も安心。
■1000円ほど
「HELI」革バンド 消臭スプレー
天延オーガニック製法で作られた、肌や環境に優しい除菌&消臭スプレー。週に1~2回、革バンドの内側部分に吹きかけておくだけで、嫌なニオイやカビの発生を防いでくれる。
優しく、丹念に全体の汚れをくまなく除去する
ケアの際は、①柔らかな素材の専用クロスを用いる(ケースやガラス面の保護)、②必ず乾拭きする(水気の侵入を防ぐ)、③力を入れすぎずソフトに実施する(部品の傷みを防ぐ)のが3大原則。
また、細かいチリや砂などが残ったまま拭き掃除をすると、研磨剤で磨いたようにケースやガラス表面をキズ付けてしまうこともあるので、実施前にはゴミの付着の有無にも注意を払っておこう。
クロスで優しく表面を拭うように。しつこい油汚れがある場合は、濡れた布を数分当て除去しよう。
肌に直接触れる裏面だけでなく、表面もホコリや皮脂などが残りやすいので1コマずつ丁寧に。
(右)ケース側面やラグ、裏ブタも念入りにケア。汗をかく夏場は裏ブタの汚れも顕著なので丁寧に。
(左)リューズの根元やラグなどクロスが入りにくいディテール部には、綿棒などを用いると便利。
「焦らず根気良く…」がブラッシングケアの基本
ブラッシングを上手に行なうコツは、順序を決めて掃き残しなく丹念に行なうことと、角度や方向を変えて根気よく行なうこと、の2点だけ。特にブレスのコマなどに汚れを残すと、肌のトラブルやブレス本体の傷み(サビなど)に発展することもあるので注意しよう。
(右)左手でブレスを握り、右手で上下左右から角度を変えながら(歯磨きをするように)1コマずつ順番に。
(左)最後の1コマまでブラッシングしたら、バックルの裏側なども丁寧に汚れをかき出しておこう。
ベゼルとガラスの境目には、ブラシを斜めに当て、溝にそってグルリと円を描くようにケアを実施。
回転ベゼルとケースの隙間にはブラシの先端を水平に入れ、手前にかき出すようにブラッシングを。
見えにくい箇所には汚れが予想外に堆積
角部分のケアの方法は、根気良くブラッシングすることが基本。ブラシの毛先が届きにくい場合は、爪楊枝や綿棒を使って、丁寧に汚れを拭っておこう。
また、凝固した頑固な脂汚れなどがある場合は、薬局などで購入できる「Aベンジン」を綿棒に少量含ませて拭えば、汚れもキレイに除去できるはずだ。
(右)バックル裏には汚れが溜まりやすいので、週1回は丁寧にブラッシングを。
(左)毛先が届きにくい角部分の汚れは、爪楊枝や綿棒を用いると簡単に除去できる。
専用クロスで除去可能だが不安な場合はプロへ相談
ただ、クロスで研磨するということは、表面を削ってしまうということ。刻まれた細密な紋様が消えてしまったり、メッキの剥げやムラを招くこともあるので要注意。作業に不慣れで少しでも不安がある場合は、必ずプロへ依頼しよう。
(右)ゴシゴシ磨かず、3~4回優しく拭いてムラの有無など様子を見ながら慎重に。
(左)研磨が完了したら、ケア用クロスで乾拭き。研磨剤成分を丁寧に拭っておこう。
溝や刻印など細部の汚れもくまなく除去しておこう
ケアの基本は、裏ブタの境目などは溝に沿ってグルリと一周させるようにブラッシング。ブラシをかけにくい凹み部分には爪楊枝や綿棒を綿棒が太すぎる場合は指先で細く加工)。文字や数字など細やかな刻印部分などには、爪楊枝の先端をカッターでさらに細く削ったものを使うと便利だ。
境目の溝に沿って、毛先の長さと弾力性を利用するように手前にブラッシング。
凹みや刻印のサイズに合わせて綿棒や爪楊枝を加工。かき出すように汚れを除去。
繊細な天然素材である革ベルトにはコマメなケアを
内部に湿気が残っていると雑菌が繁殖してカビや異臭、素材の劣化の原因にもなるので、風通しの良い場所でしっかり乾燥。夏場は週に1回、それ以外は月に2~3回程度を目安に、消臭や除菌効果のある革製品専用スプレーを吹きかけておけばさらに万全だ。
汗をかいたらその場で、また着用後は毎日、ケア用クロスで表裏面全体を乾拭き。
肌に触れる裏面全体に、3~4回に分けて消臭&除菌効果のあるスプレーを。
着脱時はバネ棒の不意の「飛び出し」に要注意!
ただ、作業時には工具の取り扱いやバネ棒の飛び出しには要注意。不用意に作業を行うとケースにキズを付けてしまうこともあるので、焦らず慎重に実施しよう。
まずは、ラグの方式を確認。写真の時計はラグに穴のないタイプなので、二股先端部を用いる。
万が一、バネ棒が作業中に飛び出してもキズをつけないよう、セロテープでマスキング処理。
二股先端部をバネ棒の肩部分に差し込み、そのまま軽く押せば、バネが収縮して穴からはずれる
穴からはずしてもそのまま動かさず、同じ容量で反対側のバネ棒も穴からはずす。
左右のバネ棒が、どちらもはずれた上体。片方が引っかかっているとバネ棒が飛び出すので用心を。
ブレスを右手で持って、そのまま上へスライドさせるように、ゆっくりと引きはずしていく。
ブラシに食器用の中性洗剤を適量(3~4滴)取る。洗剤を付けすぎると、すすぐ際に大変なので注意。
ブラシを良く泡立ててから、丁寧にブラッシング。表面だけでなく裏面からもしっかりと洗浄を。
1コマずつ順番に洗えば磨き残しがない。ブラシは角度を変えてスミズミまで毛先が届くように。
ブレス本体が終わったら、バックル裏やエクステンションなどディテール部も丹念に。
水洗いして洗剤成分を落としたら、中~低温に設定したドライヤーでサッと水気を落としておく。
タオルの上などに置き、風通しの良い場所で水気や失敬を残さないよう、しっかりと乾燥させる。
取り外しの際と同様、バネ棒の飛び出しに備えて左右のラグにセロテープを貼っておく。
ブレスをラグ間にセッティングしたら、片側のバネ棒の肩部分を押し下げながら穴の位置へ移動。
もう片方のバネ棒を同じ要領でセット。この時、工具でこじるとラグにキズが付くので注意。
取り付けが不十分だと着用中にブレスがはずれるので、作業完了後に念のため装着具合をチェック。
五十君商店・笹生さん
ブレスレットに付いた汚れを取り除くには、まずはブレスレットをケースから取り外さなければならない。
バネ棒でケースに傷をつけないように、慎重に作業をしましょう。
ケースとブレスレットを繋ぐバネ棒を工具で押して外す際に、ケースにバネ棒が当たって傷が付かないよう、予めケース側のラグバネ付近にセロテープを貼ってマスキングをする。
バネ棒が入っているラグに、工具のバネ棒はずしを挿入し、バネ棒を押す。その際に、ラグにバネ棒はずしを垂直に入れないと、ケースに傷が付いてしまうので、慎重に行う。
反対側も同様に行う。ケースを持った指で軽くフラッシュフィットを押しながらバネ棒を押すと、ラグから棒が抜けた瞬間に、フラッシュフィットがラグから外れる。
ブレスレットには見えにくい隠れた汚れがたくさん。しかし、ケースほど神経質に扱わなくても大丈夫なので、ブラシ掛けもOK。しかし、磨きキズは避けたいので、優しくソフトに押し当てよう。
表面に付いた汚れをブラシで軽く擦って落とす。磨きキズは避けなければならないので、毛並の柔らかなブラシをチョイスして、丁寧に磨くようにしよう。
コマの隙間には、隠れた汚れがたくさん! そこで、コマをひとつひとつ折り曲げて、隙間にブラシの毛先を当てて磨き上げる。ひと折りひと折りコマメに、じっくりと時間をかけて挑もう。
ラグとブレスレットの繋ぎ目であるフラッシュフィットの裏には、汚れが一番溜まっている!裏側に沿ってブラッシングし、こびり付いた汚れをキレイサッパリ掻き出そう。
バックルやラグ裏にも汚れはいっぱい! しかも、かなり細かい溝なども多く、ブラシが届かない箇所も多い。
そんなときは、爪楊枝が大活躍。爪楊枝の先端で、優しく大胆に掻き出します!
バックルの裏面の角は、ブラシの毛が届きにくく、汚れもこびり付きやすいのだ。そんな場所こそ爪楊枝が大活躍。角に沿って爪楊枝の先端を軽く当てながら走らせよう。
バックルの凹凸の装飾にも汚れが溜まっていることが多い。溝やブランドロゴの刻印等をチェックして汚れを見つけたら、爪楊枝の先端で優しく汚れを取り除こう。
普段フラッシュフィットで覆われた、ラグの角にも汚れは一杯。もちろんフラッシュフィットの裏面もそうなので、ブラシで磨いた後に、爪楊枝で汚れをピンポイントで掻き出すのがオススメだ。
ブレスレットを磨き終えたら、今度は一旦外したブレスレットを再びケースに繋げる。
外す際と同様に、バネ棒でケースにキズを付けてしまわないように、慎重に作業を進めよう。
取外しの時と同様に、バネ棒でケースに傷が付くのを避けるため、セロテープをラグ付近に貼付けて、コーティングを行う。一見地味だが、ケースを保護する重要な作業だ。
片方のバネ棒をラグ穴に予め通しておく。もう片方のバネ棒は、バネ棒はずしを使って先端を押し、フラッシュフィットを親指で押し込み、カチッとハマった音がすれば完了。
バネ棒ががきちんとラグの穴に収まったかを、念のために確認する。もし収まりが悪いと、フラッシュフィットがズレてバネ棒がケースを傷付けることもあるので、確認はお忘れなく。
ブレスレットと違ってケースと表面ガラスは繊細なので、より一層丁寧に行う必要がある。
マイクロファイバーグローブを付けて、専用のクロスを使って、丁寧に汚れを拭き取ろう。
素手だとせっかく奇麗にしても指紋の痕や皮脂汚れ再び同時に付着してしまうので、グローブは必須。中でもマイクロファイバーなら繊細なケースにキズを付ける心配も無い。
クロスを親指で軽く押し当てて、丁寧に拭く。アンティークの場合、カレンダー上のサイクロップレンズは接着仕様が多く、強く押し当てるとズレる可能性も高いので、要注意だ。
指紋や皮脂汚れを落とすのに効果的なのが、ベンジンだ。クロスに少量を付けて、サカッと一拭きすれば、ピカピカに。ペンジンは可燃性が高いため、火気厳禁なので要注意だ。
メンズファッションブランドナビ編集部
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