愛用のブーツをベストコンディションに保つ!
ハードユースが想定されたワークブートなど、いわゆる“ヘビーデューティ”のブーツも含め、しっかりとしたメンテンスを行うことでブーツの寿命も延び、日々の輝きも増します。
今回は市販の道具を使ってできる一般的な手入れ方法を解説しています。
【STEP 1】サドルソープで水洗い
【STEP 2】擦りキズのタッチアップ
【STEP 3】ミンクオイルの入れ方
【EXTRA STEP 】ドレスブーツのシャイン仕上げ
マッシュマンズ
藤田亮平さん
まずは、多くのケースに応用できるベーシックな方法&知識を紹介していく。ただし、水洗いやオイルによる加脂を行なうことで革に悪影響を与えることもあるので、そのブーツの注意書きなどを充分に確認してから作業すること。
「シューツリー」は、作業中や保管時の型崩れを防いでくれるメンテナンスの必須道具。特にフォルムにこだわるドレスブーツなら、靴の形に合ったものを探して、その靴専用にしてしまう人もいるくらいの重要アイテムだ
使用するブーツはこちら。ドス黒い油、泥汚れ、汗のシミ、深く刻まれた履きジワが年季を感じさせる
馬毛ブラシ(ホコリ落とし用)、革靴用リムーバー(汚れ落とし)、リムーバクロス(ウエスでOK)、サドルソープ、スポンジ。リムーバーやサドルソープは使用法をよく確かめておく
【1】まずはシューレースを取り外し、ホコリや表面の汚れをかき出すイメージで、隈なくブラッシングする。ブラシは、縦方向にサッサッと素早く動かすと良い。全てのメンテナンスで行なう基本作業だ
【2】靴用のリムーバーは、リムーバクロス(ウエス)を指に巻き付け、指先の部分に適量を染み込ませて使う。あまり強く擦りつける必要はなく、表面を撫でるように優しく拭き取るだけで古いクリーム、オイル、泥や汚れを落とすことができる
【3】サドルソープを使う前に、水をバケツなどに入れ用意しておこう。水を染み込ませたスポンジでブーツの表面を軽く湿らせた後、適量のサドルソープを取る。サドルソープをよく泡立て、優しく撫でるように表面を洗っていく
【4】羽根の内側は汚れが溜まりやすいので、しっかりと洗おう。ブーツ内が水浸しにならないよう注意
【5】全体を洗い終わったら、スポンジに含ませた水で泡を洗い流す。サドルソープには保革成分も含まれているため、完全に落とす必要はない
【6】濡れた革は柔らかいので、すすぎ終わったらすぐさまシューツリーを入れて型崩れを防ぎ、履きジワを伸ばすように形を整える。急激に乾燥させると革が傷むため、陰干しで1日かけてゆっくり乾かした後、通常の手入れを行なう
水洗いが済んだ後の水を見れば、いかにブーツが汚れていたかが分かる。これだけの汚れが落ちれば、気分も爽快になるはずだ
黒ずんだ汚れがスッキリと落ち、革にハリが戻っていることが分かるだろうか。ブーツが雨に濡れると、乾いてから革に染み込んでいた汗が白いシミになって浮き出ることがあるので、この場合も水洗いが効果的だ
ブーツのキズは、履き込んだ証として放っておくという考え方もあるが、気になる人のために革用染料を使ったキズのタッチアップ方法を紹介しよう。キズの有無で印象がガラリと変わることが分かるはず。
同じブーツを引き続き使用。バイク乗車時に履いていたため、アッパーにダメージが多く見られる
ここで使っている染料は、レザーマスターのカラータッチアップ。キズを埋めて平らにする効果もある、部分補修用の水性染料だ。カラータッチアップキットには、仕上げ用のレザープロテクションクリームも付属している
【1】使用するカラータッチアップを容器などに出し、刷毛でブーツの目立たない部分に塗って色を確かめよう。色が合わない場合は、複数の色を混ぜ合わせることもできる。元の革の色より濃いと目立つので、やや薄めに合わせると良いだろう
【2】色が決まったら、刷毛でキズ全体に塗りこんでコットンクロスで馴染ませる
【3】どの部分にでも使えるので、気になるキズがあったら同様の方法でタッチアップしていこう
【4】今回は、コットンクロスでプロテクションクリームを塗って仕上げた。保湿、栄養補給、表面保護の効果もある
最初の写真と比べると、剥げていた革の色が戻り、キズの凹凸も平らに均されている
水洗いの作業も含めたビフォアとアフターを並べてみた。色ツヤ、革のハリ共にかなり見違えたはず。長年手入れを怠っていたブーツも、しっかりケアすればここまで復活するのだ
革のコンディション維持という意味では、数カ月に一度、または長期保管の前後に使用すれば充分なほどだ。
先程のブーツの、水洗いをしていない方を使用。ミンクオイルを入れただけのケースと仕上がりを見比べてみよう
馬毛ブラシ(ホコリ落とし用)、革靴用リムーバー(汚れ落とし)、リムーバクロス、ミンクオイル、仕上げ用クロスを使用
【1】シューレースを外したらシューツリーを入れ、【STEP 1】と同じ要領でブラッシングし、リムーバーで汚れを落とす。ステッチの部分、羽根の裏側、アッパーとソールの境目の隙間などは汚れが溜まりやすいので、念入りに行なう
【2】コットンクロスに少量のミンクオイルを取ったら、円を描くように撫でながら少しずつ塗り伸ばしていく。あまり多く入れる必要はないため、なるべく薄く伸ばすようにしよう
【3】ヴァンプやバックステイまで、しっかりとミンクオイルを行き渡らせよう
【4】全体にミンクオイルが行き渡ったら、仕上げ用のクロス(グローブ型が便利)で磨いて馴染ませる
水洗い、キズのタッチアップを行なったブーツの仕上がり写真。ミンクオイルの仕上がりと比べよう
オイルを入れることでキズの部分の色が濃くなって目立たなくなるため、この作業だけでもかなり印象が変わるはず。全体的に穏やかなツヤを持った仕上がりになるので、好みで仕上げ方法を選ぼう
カントリーブーツの代名詞、イギリスの名門トリッカーズを使い、上品なシャイン仕上げを施す。
革靴用リムーバー(汚れ落とし)、リムーバクロス、馬毛ブラシ(ホコリ落とし用)、豚毛ブラシ(仕上げ用)、革靴用クリーム(乳化性)、クリーム用の小型ブラシ、革靴用ワックス(油性)、グローブクロス、ポリッシュクロスを用意する
【1】シューレースを外したら、シューツリーを入れて履きジワをしっかりと伸ばす。磨いている最中は意外と力が掛かるので、シューツリーは型崩れ防止の必須アイテム
【2】ブラシをサッサッと素早く動かし、全体のホコリや汚れを取り除く。ステッチの部分、羽根の裏、コバの上の隙間など、汚れの溜まりやすい場所は念入りに掃除すること。全ての手入れを行なわずとも、たまにブラッシングを行なうだけで、コンディションは維持しやすくなるはずだ
【3】リムーバクロスを指に巻き付け、革靴用のリムーバーを染み込ませたら、円を描くように優しく汚れを拭き取る。汚れと同時に革の呼吸を阻害する古いクリームやワックスも取り除く、非常に重要な作業だ
リムーバーを使えば、古いクリームや汚れがこんなに落ちる。前回のクリームをしっかりと落としてから新しいクリームを入れることが、革にとって非常に大切
【4】クリーム用の小さなブラシに、適量のクリームを取る。よく聞く量の目安は「米粒大」。ごく少量ということだ
【5】適量のクリームをなるべく全体に均等に行き渡らせるため、塗り始める前にトウとバックステイの2ヵ所に“チョンと付けておく。1ヵ所から始めると、充分に塗り伸ばせず途中で足りなくなる可能性があるのだ
【6】擦り込むようなイメージで、円を描くように素早くブラシを動かしてクリームを靴全体に塗り伸ばしていく。窪みの奥やステッチにもクリームが行き渡るよう、しっかりと塗り伸ばそう。革の色が黒以外であれば、対応した色のクリーム(革よりもやや薄い色がお薦め)を使うこと。全ての色に使えるナチュラル(透明なクリーム)もあるが、抜けた革の色を補う効果がない
【7】クリームが行き渡ったら、さらにクリームを全体に馴染ませるために、仕上げに最適な豚毛ブラシでブラッシングを施す。この辺りから光沢が生まれ始める。ホコリ落としの馬毛ブラシと併せて豚毛ブラシの色違いを揃えれば、混同を防げる
【8】仕上げ用のクロスで軽く磨き、クリームをさらに馴染ませる。作業が楽になるグローブタイプがお薦め
右のビフォアもそれほど汚れていないが、クリームを入れただけのアフターブーツの方が、深みのある光沢を持った上品なツヤに仕上がっていることが分かるだろう
【9】少量のワックスをコットンクロスでトウに塗り広げよう。ワックスは浸透するクリームと違って表面に“載る”ものなので、全体に塗ると革の呼吸を阻害する。また、シワが入る部分に塗るとロウの成分が割れて白いラインが出てしまうため、ワックスは芯材の入っているトウやヒールの部分にのみ施すことをお薦めする
【10】トウにワックスを塗り広げたらしばらく置く。その後、数滴の水を指先で“チョン”と付け、その上からポリッシュクロスで磨く。表面を平らに整えたいので、金属を“水研ぎ”するように優しく丁寧に磨くこと
【11】ワックスを何度か塗り重ね、同様に水を使って磨いていけば、段々と凹凸が減って光沢が増してくる
【12】穴飾りに入ってしまったクリームは、ブラッシングや先の細い棒で丁寧に取り除いておこう
【13】シワが入る部分にワックスが載ると使用時にヒビ割れてしまうため、塗る範囲にはご注意を
トウの部分のみがさらに深い光沢を持ち、全体を引き締めるアクセントとなった。「こんなにピカピカなのは嫌だ!」という人は、クリームを入れた段階で手入れを完了しても問題ないが、ワックスは傷つきやすいトウを保護する役割も持っていることを覚えておこう。
“セミドレス”と呼ばれる、ワークブーツにドレスブーツのテイストを加えたブーツは、あまりハイシャインが似合わないことが多いため、程々に控えておこう。ちなみに、紳士靴では顔が映るほど磨く“鏡面仕上げ”まで施すこともある
ワークブーツやドレスブーツのベーシックな手入れ方法の次は、素材の異なるブーツのメンテナンス作業を、注意点を交えながら紹介していこう。基本は専用の道具を用意することに尽きる。
オールデン製の“405”。キメ細やかなカーフの特徴を活かす仕上げを施す
リムーバー、リムーバクロス(ウエス)、カラータッチアップ、馬毛&豚毛ブラシ、繊細な革専用のクリーム(モゥブレィのアニリンカーフクリーム)、小型ブラシ、グローブクロス
【1】シューレースを外し、シューツリーを入れたら、手で履きジワを伸ばすように形を整える。その後、馬毛ブラシを使ってホコリやゴミを取り除く。作業の要領はベーシックメンテナンスと全く同じだ
【2】指に巻きつけたコットンクロスにリムーバーを染み込ませ、優しく擦って汚れや古いクリームを取り除く
【3】「【STEP 2】擦り傷のタッチアップ編」でも出てきたカラータッチアップを使い、薄ら剥げた革の色を修正してみよう
【4】部分補修用の染料、カラータッチアップをコットンクロスに取り、薄く塗り伸ばすようにキズ部分全体に馴染ませていく。必ず、予め目立たない部分に塗り、染料の色がブーツの元の色と合っているかを試しておくこと
カーフはキメが細かいだけに、ちょっとしたキズも目立ちやすい。小さなキズを補修しただけで、見違えるように印象が変わることが分かるはずだ
【5】小さな革靴用ブラシに、繊細な革用のクリーム(モゥブレィのアニリンカーフクリームを使用)を取る
【6】ドレスブーツのシャイン仕上げ【4】からの作業と同じ要領で、少量のクリームをブーツ全体に薄く塗り伸ばしていこう。しばらく置いて浸透させたら、豚毛ブラシによるブラッシングで全体にクリームを馴染ませる
【7】最後に仕上げクロスで磨けば、クリーム特有のツヤやかな光沢が生まれる
コードヴァン等のデリケートな革に関しても作業の要領はほぼ同じだが、市販されている専用クリームを用意したい
上の写真は、【5】のキズ写真と同じ部分を写したもの。染料によるタッチアップとクリームを入れたことで、ほとんど目立たなくなった。革の表面には穏やかな光沢が生まれ、カーフ特有のキメの細かさが活きている
ヴァンプ全体にリザード(トカゲ)の装飾が施された、見事なウエスタンブーツ。作業は至って簡単だ
革がデリケートすぎて汚れ落としに通常のリムーバーが使えないため、水拭きするための布巾を用意。この他、馬毛ブラシ、コットンクロス、エキゾチックレザー用クリーム(サフィールのレプタイルクリーム)を使用して作業を行なう
【1】始めに行なうブラッシングでは、柔らかい“馬毛”のブラシを使用すること。市販されている
【2】濡らしてきつく絞った布巾を使い、表面のホコリや汚れを取り除く
【3】デリケートなエキゾチックレザー専用のクリーム(サフィールのレプタイルクリーム)を革の表面に塗り伸ばす。ブラシではなくコットンクロスを使用することで、デリケートな革へのダメージを防いでいる
【4】エキゾチックレザーには凹凸があるので、窪みに入った余分なクリームをブラシで掻き出す。この際、馬毛のブラシを使うこと。通常の仕上げ用は豚毛を使うと記載したが、コシが強いためデリケートなレザーには不向き
クリームでしっかりと保湿、栄養補給をすれば、高級革に似合う上品な光沢が生まれる。ファッション性の高いブーツは、表面のコンディションにも常に気を配りたい
使用するブーツはホワイツのスモークジャンパー。
スエード用クリーナー(消しゴムタイプ、ゴムブラシタイプ、ワイヤーブラシタイプ)、スエード用洗浄剤、スエード用防水スプレー
【1】シューレースを取り外し、型崩れ防止のためのシューツリーをブーツに入れる
【2】スエード用のゴムブラシを使ってみよう。毛の奥から汚れを掻き出し、寝ている毛を起こすイメージで、毛並みに沿って全体をやや力強くブラッシングする
【3】毛に汚れが絡み付いて特に黒ずんだ部分には、局部的に消しゴムタイプや金属ワイヤーのブラシを使うと良い。これらの道具も、やはり掻き出すようにやや力強くブラッシングして使う。多少の汚れならキレイに落とせるはずだ
スエードはクリームを使用できないので、基本的なケアはこれだけ。毛並みが揃い、大分落ち着いた様子になったはずだ。右写真のように、ブラッシングでは落ちない頑固な汚れが気になる場合は次の項目へ、特になければ仕上げの項目【6】へ進もう
【4】局部的に黒ずんだ汚れがブラッシングだけで落とせない場合、スエード専用の洗浄剤を使うと良い。ここではサフィールのオムニローションを使用した。付属している専用のブラシを使い、汚れの気になる部分を泡立てながらブラッシングしよう
【5】充分にブラッシングした後、水を含ませたブラシで泡を洗い流し、乾いたタオルを押し付けて大まかな水分を取っておく。後は陰干しでゆっくりと乾かそう
【6】起毛革には防水スプレーが非常に有効。ここでは、栄養補給や色褪せ防止効果も持ったウォーリーのフレッシュスプレーを使用した。スプレーは商品ごとの使用方法をよく確認すること
スエードやヌバックのブーツを丸ごと水洗いするシャンプーもある。根強い汚れがあったら試してみよう(写真はモゥブレィのスエード&ヌバックシャンプー)
毛が寝てしまい、黒ずんだ汚れが付いているビフォアに比べ、アフターでは毛並みが揃い汚れも落ちているため、スエード本来の質感が蘇っている。防水スプレーを施した起毛革は、水や汚れが付きにくく、雨の日にピッタリのブーツになる。購入直後の新品にもスプレーをしておくと良いだろう
ソールは磨り減って当然なので消耗品と考えるのが普通。見えない所とはいえ、しっかりと手入れをすることでブーツの輝きも増す
革靴用リムーバー、リムーバクロス、馬毛ブラシ(ホコリ落とし用)、小型ブラシ、仕上げ用クロス、レザーソール用ローション、コバ用クリーム、サンドペーパー#1000を使用する
【1】シューツリーを入れたら、ソールをブラッシングしてゴミやホコリをしっかりと払い落としておく
【2】適量のソールモイスチャライザーをソールに出し、ブラシで満遍なく塗り広げて浸透させる
【3】液体を吸った革は繊維が膨らんで柔らかくなる。これを防ぐため、コットンクロスを巻いたブラシの背などで革を押し付けるように擦り、繊維を引き締めさせる。引き締まった革は色が若干濃くなり、見た目で分かるはずだ
磨耗と乾燥のために無残な姿を晒していたソールに潤いを与え、しっかりと繊維を引き締めた結果、右の写真のように革本来の質感がかなり蘇った。見えない部分と侮らず、ソールまで行き届いた手入れを施しておけば、チラリと見えたときの靴の印象も飛躍的に良くなるはず
【1】作業を始める前に、アッパーの革に影響が及ばないよう、マスキングテープ(一般市販品)を使ってコバから上を養生しておこう
【2】アッパーの手入れ作業と同様、ブラッシングとリムーバーでゴミや汚れをキレイに取り除いておく
【3】ここでサンドペーパーを使ってコバを研磨し、表面を整える。指で少しだけ水を付け、その上からサンドペーパーで擦っていこう。水研ぎの要領なので、本当に軽い力で充分だ。逆にキズを付けてしまっては元も子もない
【4】コバ用のクリームをコットンクロスに取り、コバ全体に薄く塗り伸ばす。モゥブレィのウェルトクリームは、保湿、栄養補給と同時に褪せた色を補う効果も持っているが、コバ専用の染料、いわゆる“コバインキ”などを使っても良いだろう
【5】ウェルトクリームを塗り広げた後は、仕上げ用クロスで仕上げ磨きを施しツヤを出す。コバも使用によるダメージを非常に受けやすい部分なので、不用意にクリームを入れることは避けた方が良いが、時折様子を見てやって、傷んでいるようであれば手入れをすると良い
キズや摩耗でくすんだように色褪せたコバに、鮮やかな革の色と光沢が蘇っていることが分かるはずだ
メンズファッションブランドナビ編集部
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